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王の眼(江森備)2~4感想


1巻感想→http://dokukiro.exblog.jp/26986548/





面白かったし、文章も上手かったのだが、ギリギリ一般向けと言っても問題ない2巻までの雰囲気と、
一気に鬼畜JUNEエロ小説になる3巻からの雰囲気が違いすぎてとてもびっくりしたし、
カバーイラストと最初の方の普通の歴史ファンタジーっぽい流れにはまった人が地獄を見るのでは…?と心配になった。





脱童貞したり、父と同族のアンジェトたちにちやほやされまくって調子に乗りまくるクソガキハルが、敵である王についた民族の軍隊に無体をはたらいたり、アンジェト娘たちでハーレムを作らせてやりまくったりする2巻。


対するセティは、ハルによって額に名前を彫られた仲間を哀れがったり、憎いはずのハルの父、ウシルのためにこっそり立派な墓を建てていたりと、実は良い王であることが明らかになっていく。


子供がちやほやされて調子に乗っていくのはなんか生々しい…


セティはハルによって捕らえられる。
宰相ネフェルトゥムはハルの母アセトに額の飾りを外してウシルの名前の入った焼き印を見せ、アセトには見せないようにつとめていたウシルの暴力的な性衝動を明らかにし、セティを逃すように説得。


アセトはハルも母親の言うことなら聞くだろうとセティを逃すが、既に権力に酔っておかしくなっていたハルは、母親を追放。


ハルがこうなるのを分かっていて止めないアンジェトはやっぱり悪い人たちなんだなってところで堂々の3巻である。



3巻は過去の、ハルの母と叔母、アセトとネブケトの婿選びの話までさかのぼって始まる。
求婚者のなかでは家柄も上の方で、物腰がやわらかく線の細い美形であったセティは、アセトの夫の第一候補だった。
一方、明るくみんなのまとめ役をこなすウシルは、妹のネブケトと仲良くなる。


セティに比べて教養はなくとも、人当たりがよく体も頑強なウシル。
この頃は優しかったのにハルと同じように権力握ってからおかしくなったのかな…と思ったが、それだとネフェルトゥムの「セティが王になるはずだったのにウシルが汚い手で横取りした」と合わないよな…?
と思ってたら、とうとう明日が婿選びの日という夜に事件が発生する。


求婚者みんなをひとつの館に集めて酒を飲ませるウシル。途中までは楽しい宴会だったが、急にセティは柱に縛りつけられてしまう。
ウシルはアセトの夫にほぼ内定しているセティを、婿選びの場に出られないようにしてしまうつもりなのだ。
お坊っちゃんでおっとりしているセティは「辞退すればいいのか」と問うが、なんとウシルに犯されてしまう。
殴られたり蹴られたりは予想していても、まさか犯されるとは思っていなかったセティ、茫然。
ウシルが手回ししておいた、求婚者のなかでも素行の悪い連中の手ものびてくるが、いまいち状況が飲み込めない。


その様子を見ていたほかの求婚者も異様な雰囲気に。さっきの酒にレタス(古代エジプトでは精力剤と考えられていた)が入っていたのだ。


ウシルの指示で72人に犯されるセティ。
死ぬって。しかし栗本薫の話とは違って出血もしないセティ。丈夫すぎる…
ちなみに一人で2回戦に突入しようとするとウシルに怒られる。運営ちゃんとしてる…


あと無駄にウシルにキスされたときのセティの描写がエロい。
なぜこの文章力を一般受けしないJUNEに…


1巻にも出てきたナクトさんは「レイプやだ!無理!帰る!!」と至極まっとうなことを言うが、ウシルにショタコンなことがバレており、ウシルの性奴隷シャブティ(後のネフェルトゥム)に手伝われて結局参戦してしまう。



死ぬような目にあって疲労困憊のセティは結局婿選びの場に出られなかったが、アセトの妹ネブケトの結婚相手に選ばれる。
ウシルはアセトと結ばれることになったので、まさかの親戚になってしまったのだ。超かわいそう。


結婚してからもウシルと不良求婚者に裏で性奴隷にされるセティ。
何が可哀想ってアンジェトの資金源にするために金銭的な搾取もされている点だ。
性的搾取だけならまだいいんだけど、さすがにみじめすぎる…
そのせいで領地から黄金取りすぎたから実家からも嫌われるし踏んだり蹴ったりである。


体をばらばらにされる夢を見るセティ。
デビルマンのみきちゃんとか残神とかでもこういう描写あったけど、江森備の表現力も非常に高く、病んでいるセティの生々しい苦しみが伝わってくる。


こんな惑星オイスターみたいな状況におかれたらたいていの人間は心が折れると思うのだが、セティはなんと下克上を考える。
急にたくましくなった!


セティは最初「この生活はウシルの本質が見抜けなかった私への罰かな…罰与えられるほど悪いことしたかな…」と悩んでいたが、
おそらく江森キャラなのにあまりたくましくなかったのが罪だったのだろう。


柩5つぶんの黄金を巻き上げられた際にシャブティ(ネフェルトゥム)を戯れに与えられたセティ。
ウシルはもちろん性処理ショタとして与えたのだろうが、セティは何となく彼に教育を受けさせてみる。
そしたらなんと建築の才能が半端なかったのだ!すげえ!!


シャブティ(ネフェルトゥム)はめきめき賢くなるが、こっそり教育を受けさせていたのがウシルたちにバレて、無理矢理適当な割礼をされてしまう。


「幸い男性機能を失うまでには至らなかったぜ!」とへこまないシャブティ(ネフェルトゥム)とセティ。
まだ二人は恋人ではないが仲良しである。そしてポジティブ。
並べて犯されてるとき手を繋ごうとしてるのが可愛かった。
オイスターでよくあるけど奴隷同士の百合は萌える。


そんなハードな毎日なのに、領土を広げる野心をもったウシルと敵対しそうな人たちを調べて連絡とる二人。
本当にポジティブだな。


ナクトも協力関係になるが、彼はセティの体をしきりに求める。
色んな男女と試した結果セティと一番体の相性がよかったらしい。マジかよ。
1巻で過去のこと言って殺されてたけど元カレだったからってのもあったのか…


この頃からセティはごろつき一人一人やウシルに「あなたが一番好き♡」と言いまくって篭絡する作戦に出る。
ごろつきのリーダーは「成人した男そこまで好きじゃない」とか言ってたのにぞっこんになってる…
セティはなんか特殊能力でも手にいれたのか。



ごろつき全員を寝返らせ、かつての求婚者仲間たちも味方にひきこみ(転んでもただではおきないセティ)、領土を狙われている黒人の女王の協力も得て準備万端!!


でも私最近ウシルに恋しちゃってるかも…と悩むセティ。共依存的なあれでは…?


上機嫌なウシルは急にやってきてセティに、自分は先王のシュウの息子で、今の王のゲブに復讐するためになりふり構わなかったと告げる。
しかも謝り出す。謝って済む問題じゃねえんじゃねえかな…


ウシル暗殺の決行は近いというのに、「最近全然可愛くないアセトやネブとは違って可愛い♡」だのなんだの言われて完全に堕ちるセティ。負けてるんじゃねえか!
昔の女性作家の話って大体女の怨念で男に復讐しようとしてるけど結局身勝手な男を許してしまう業に落ち着くよね…落ち着いてる場合か!?
セティの肩に国際問題がかかってるんですけどお!


黒人の美人女王に「ウシルを殺す計画なんとかなりませんか」と相談しにいくセティ。
ちなみに女王はセティがウシルの性奴隷にされていることをしっている。
女王に「おめーウシルに『アセト姫より大事』とか『愛してる』とか言われたんだろほだされんじゃねーぞ領土問題だぞ」と普通に叱られるセティ。図星だよ!


女王に「不幸すぎて愛の基準ぶれてんじゃね?落ち着け」とよしよしされ、セティは結局ウシル殺しを決める。
女王も同じ「女」であることには変わらないのにめっちゃ健康的で吹いた。


棺にウシルを騙して詰めて(腕力だと誰もかなわないから)
海にどんぶらして、セティが玉座を手にいれて3巻は終わり。
ごろつきは殺したがナクトは許した。
このままだと豊かな土が偏ってしまうのでネフェルトゥムと遷都の計画して頑張るセティ。


ネブケトの子供(アンプ)はウシルが死んだときにイアンの協力を受け逃がされてしまった。
ネブケトがウシルと浮気してたり(セティとはまったく関係をもっていない)、セティにちょっと触れただけでもバイ菌扱いしたりしてもセティは「ショック…といいたいところだが案外そうでもない!」とコメントするのでちょっと面白かった。
アセトには好意もっててもネブケトはそんなに好きじゃなかったのかな。じゃあしょうがないな。



4巻、セティは遊牧民族の手を借りて玉座に戻るが、この遊牧民族がアンジェトより荒くれていて、国はめちゃくちゃに。


遊牧民族の長の家の姉妹がセティの妻となるが、最初は可愛かったのにどんどん歪んでいき、セティが牢に捕えておいたハルをもてあそんで性的に虐待(下男使った)したり、城下に領土を広げたりとやりたい放題。


セティはなんかすごい媚薬を盛られてほっとくとしこるやばい状態になってしまったハルを保護するが、ウシルに似ててたまらないぜ!とまたがって犯してしまう。
だめじゃねえか!
50過ぎた叔父とか悪夢なのでは…と心配したが、どうやら江森ワールドではセティとネフェルトゥムの容色は衰えないらしい。
おかしい…他のキャラは普通に年取ってくのに…


ハルはアンジェト含む色んなとこから命を狙われてるのに、自分の敵が誰なのかちゃんと分かっていない。ダメだこいつ。
しかし各地を逃げるうちにセティが王として人気が高かったこと、立派だったことを学んでいく。


また「俺の“前”で王の叔父すら虜にしたぜ!」と謎の自信も持っている。トラウマになって無いんだ…タフか…


その後再会した時は普通に恋人同士になってるし!ハルはマジで何でも行ける子なんだね!
ネフェルトゥムは、ハルがこれから良き王になるにはセティの愛が必要と考え身を引く。
そんなびっちおじさんの愛で本当に大丈夫なの…?


暴走した遊牧娘たちからハルを逃がすセトだが、遊牧娘たちの命令で二人の下男のキアンに犯される。
ちなみにアンプもとっつかまってひどい目にあう。
セティは慣れ切ってるの大して堪えていないが、アンプは日に日に衰弱していく。
これが正しい反応で、ハルとセティのタフさはおかしいよ!


セティはその後遊牧娘たちの手によって牢に入れられて餓死させられようとするが、ネフェルトゥムの妻の黒人美女がキアンに命と引き換えにかけた、女にたたなくなる呪いのおかげでこっそりオナホとして生かされて生きていた。
隙を見てキアンと刺し違えるファインプレーも。


結局アンジェトの偉い爺さん二人がラアの家の出で、みんなそれに踊らされてたんだねってことが判明。
片方は剣に長けていたが、ハルに倒される。


セティとネブケトは死んでしまったが、遊牧娘たちも元々の場所に返し、平和を取り戻した国。
ハルはこれから正しい血筋の奥さん(ハルに捧げたのにアンプに処女アピールをしたたくましいお嬢さん)と国を守っていくでしょう的な感じで完。



んっ!?ネフェルトゥムの出生は!?外国の高貴な子だって設定は謎のまま!?
いつネブケトとセティ仲良くなったの!?
アンプだけ鬱になってて可哀想。
というか明るく終わってるけど残酷な神が支配するみたいにアンプのフラッシュバックにハル付き合わされてく流れだよね!?大丈夫!??
セティはアンプよりさらに長期間、五年くらいひどい目に遭ってきたと思うんだけど本当にポジティブだったんだな…
やはり超人的な適応力がないと江森ワールドでは生きていけないんだ…
あと個人的にハル×病んだアンプ見たかった…残酷な神が支配してしまうのは予想できるけどやっぱり江守備の文章で見たかったな…





四巻だけ文章が二段になっていたり、なんだか急いでいる感じがあったのでおそらく五巻まで出す予定が急遽四巻になって詰めたんだろうと予想。


ぶっちゃけ三巻に江森備先生の書きたかったことがほぼ詰まってると思われるので、四巻は急いでる上にちょっと適当なところも多い。
しかし古代エジプトについてよく調べて描かれているし、文章はなんどもいってるようにとても上手いし、キャラクターもみんなメソメソ悩むにとどまらずなかなか逞しいので、長いが読む価値は十分にあると思う。


流行らないかな…とちょっと思うが、いかんせん三巻最初が惑星オイスターなので一般受けはしなそう。
もったいなあと思う反面、そここそが描く原動力だから仕方ないのかなとも。


感情的になり過ぎない作家さんなので、JUNE系のノリが苦手な人の入門にもいいんじゃないかな。
リョナすれすれの展開に耐えられればだが。
うーん三四巻一気読みしてしまうくらいに面白いんだけどなあ。



江森先生が美人ピアニストという情報がきになる…
小説道場に投稿したのが20過ぎというのは勇気づけられる…私も頑張れば文章上手くなるかな。
でも他人の文章に好き勝手言うのが好きなだけだからこのくらいでもいいかな。
読みやすくなるような精進はしたい。



by dokushokirokutoka | 2017-08-10 15:10 | 小説 | Comments(0)

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